作業靴の先芯である「樹脂」と「鉄鋼」ですが、安全靴の先端に装着されている「保護体」の違いです。安全靴は作業内容によって必要な安全性が変わってきます。ここでは「樹脂」と「鉄鋼」のメリット・デメリットと合わせて、適した作業内容をご紹介します。
安全靴の先芯で「樹脂」と「鉄鋼」の違いはなに?
作業靴の先芯として表記されている「樹脂」と「鉄鋼」とは、落下物等から爪先を守るために安全靴の先端に装着されている「保護体」の違いです。「安全靴」は、厳密にはJIS規格に適合している作業用靴のことを指しており、鉄鋼製の先芯であったり、素材は革であったりといった安全に関する様々な基準があります。しかしながら、JIS規格の一部を満たした靴も、安全靴と明記されて流通している場合がありますので、安全靴を購入するときには職場で定められた安全靴の基準を確認しましょう。
JIS規格の安全靴が義務化されているのは重作業の職場が多いですが、普通作業や軽作業の職場でも足元のリスクは少なくありません。普通作業や軽作業では重く頑丈な安全靴よりも、つま先を守る機能がありつつ、軽量化された作業靴のほうが作業内容に適している場合があります。そのため、靴先端の保護体を、鉄鋼製もしくは樹脂製の先芯にすることで、足元を保護しながら軽量化された疲れにくい作業靴が、職場によっては指定されているケースがあります。
先芯のみが鉄鋼製もしくは樹脂製の作業用靴は、安全靴と同様に短靴から半長靴まで様々な作業に適したものが販売されています。靴の素材に関しては、革だけではなく加工のしやすい素材も使われており、日常使いができるようなおしゃれなスニーカー安全靴も販売されています。
鉄鋼と樹脂の先芯は、それぞれにメリットとデメリットが存在します。鉄鋼製先芯の靴は、樹脂製に比べて重さがありますが、頑丈で安全性が高いです。樹脂製先芯の靴は鉄鋼芯の短所をカバーするものとして装着されており、軽くて疲れにくいですが鉄鋼製よりも安全性は劣ります。最近では、両者のメリットを生かした作業靴も多く開発されており、多様なデザインやバリエーションが販売されています。
「樹脂」先芯のメリット・デメリットと適した職場
樹脂製先芯の最大のメリットは、鉄鋼製先芯に比べて軽いことです。鉄製の先芯も薄くはできていますが、落下試験等に合格するためには最低限の厚みが必要となります。また、鉄鋼は素材自体に重みがあるため、軽量化安全靴と明記されているものには樹脂製の先芯が使われています。
他には、樹脂は熱伝導性が低いため、冬季に爪先が冷たくなりにくいというメリットがあります。鉄鋼性先芯が輻射熱を受けて熱くなってしまうことがありますが、耐熱性の安全靴を選ぶことで解決できます。しかし、鉄製先芯が冬の冷気で冷えて、爪先が冷えてしまうのを防ぐことは難しいです。樹脂製の先芯は熱伝導性が低いので、体の熱が奪われにくいです。
樹脂製先芯のデメリットとしては、第一には強度が弱いことがあげられます。それは、重作業用安全靴の先芯が全て鉄鋼製であることからも分かります。逆に軽作業用安全靴になると、先芯が樹脂製のもので見た目がスニーカータイプの作業靴が多いです。したがって、樹脂製安全靴が適しているのは、軽さが生きてくる点を考慮すれば、まずはよく歩く職場です。一日中履いて歩き回っていると、靴に重さがあればあるほど足に疲労が溜まりやすくなります。樹脂製が適した職場ないし労働者としては、ホームセンター等で歩く距離が長い方、あるいは軽作業をする女性向けであると言えるでしょう。
「鉄鋼」先芯のメリット・デメリットと適した職場
JIS規格に適合した安全靴も使用されている鉄鋼製の芯のメリットは、なにより強度が高いことにあります。たとえば、重作業用安全靴では、1トンの重みを受けても先芯が潰れない性能を保持しています。そうした優れた性能をもった安全靴を履くことは、心理的にも大きな安心感となるので、労働者が安全作業を行うのに貢献しているとも考えられます。
次にデメリットですが、第一には鉄鋼自体が持つ性質である重さにあります。先端がどうしても重くなってしまうため、靴全体のバランスを取るために全体的にも重くなりがちです。
第二には、樹脂製のところでも述べたように、冬季は金属の芯が冷えてしまうので、履いている人の爪先まで冷えてしまうことです。
第三は、鉄鋼芯は固いため、作業用靴の履き心地が固く感じられることです。足の幅が広い方は、時に足の小指が芯に当たる場合があるかもしれません。多くのメーカーは4Eと言って幅広タイプの安全靴も用意していますから、そんな場合は、幅広タイプをお勧めします。
職場によって適した安全靴・作業靴がありますが、先芯を樹脂製と鉄鋼製のどちらを選ぶときに、自分の判断で購入するのは危険です。安全靴が必要とされる職場では、どういった基準の安全靴が必要か提示されていると思うので、購入の際には職場で定められた安全靴を選びましょう。