安全靴を選ぶとき、形が違うだけで性能は同じように見えるかもしれませんが、実際にはJIS規格によって細かく分かれています。安全靴を購入するときに特に注意して欲しい「JIS規格」と「JIS規格のT8101」、「ウレタン製の靴底の注意点」をご説明します。
安全靴を買うときはJIS規格が必要な職場かどうか確認しよう
一見、形の違いのみに見える安全靴ですが、JIS規格によって性能が細かく定められています。詳しくは後述しますが、まず安全靴を使用する根拠としては、労働安全衛生規則第558条に「事業者が講じなければならない措置」として着用を義務化されています。
安全靴が必要とされる職場としては、建設工事現場、製造業の工場、鉱業等があげられます。これらの職場に共通していることは、重量物を扱うこと作業内容ということです。重量物を足元に落としてしまったら、大怪我に繋がる危険性があります。また、工事現場の鉄筋や工場内構造物などが身近に置かれた環境のため、足元は常に危険にさらされているとも言えます。
また勤務する企業によっては、安全用品は「貸与」という形で、実質無料支給されることもあります。その場合には自分から安全靴が必要かどうかを確認する必要はありませんが、各自で安全靴を用意する職場では、JIS規格の安全靴が必要かは必ず確認しておきましょう。
JIS規格のT8101に注意して、安全靴を履こう
では、そのJIS規格とは何でしょうか。
JIS規格とは、安全靴を安全性能の差によって分けたもので、H種(重作業用)、S種(普通作業用)、L種(軽作業用)の3つの区分があります。
H種(重作業用)は、もともと鉱山、鉄鋼、造船の作業の一部では使用されていましたが、労働環境の整備等によって、近年使われることはあまりありません。したがって、現代ではS種とL種の安全靴でほとんど問題ないと言えます。
区分の差は、主に耐圧迫性能と耐衝撃性能結果によります。
耐圧迫性能とは,爪先部分を平行な盤にはさみ,ゆっくりと潰していく試験方法で、潰したあとの先芯と靴の中底の隙間が定められています。
耐衝撃性能は、円錐形の20kg のおもりを規定の高さから先芯に落下させ、凹んだ状態での隙間を計測する方法です。
これら3種は、外観上も違いがあります。H種はいかにも安全靴といういでたちで、全て革製です。S種となるとスニーカーのような外観が増え、L種は単なる革靴のように見えるものもあります。
ウレタン製の靴底は加水分解に注意しよう
安全靴の靴底素材は、ゴム製とポリウレタン製があります。それぞれ長所と短所があり、目的別に使い分けられています。
そのなかでポリウレタン(ウレタン)は、歩いても床が黒くならない、滑りにくい、 軽いなどの長所があります。また反発力が高いので、歩いたときに足が疲れにくく、安全靴以外に一般の革靴やスニーカーにも使われています。
しかし、ウレタンの避けられない欠点として、加水分解される点があげられます。これは、靴底のウレタンが文字通り水と化学反応を起こして分解される=ボロボロになってくるもので、水たまりを避けて歩いていたとしても、長い間に空気中の水分と反応してしまいますから、劣化は避けることができません。
状況としては、はじめに角が取れて丸くなることから始まり、徐々に大きなブロックが剥がれてきます。もちろん使用状況や職場の環境によっても違ってきますが、劣化した靴を無理に履いていると、やがて一気に亀裂が入ったり、底が一部剥離したりします。こうなると歩きづらくなりますし、足首の捻挫にもつながりかねないなど安全性どころではありませんので、劣化が大きく進む前に交換が必要です。
ウレタンの加水分解は、いわば宿命と言えるものですが、それを知らないために消費者センター等には「靴底がはがれた」という苦情が絶えないそうです。これを読んだあなたは、忘れないでいて下さいね。余談ですが、大型スピーカーのエッジ(可動部分のふち)にもウレタンが使われているものがあり、靴同様に数年でボロボロになります。