「安全靴」とは、厳密にはJIS規格を満たしてるものを指します。
ここでは、安全靴の安全性を保障する「JIS規格の甲被」「JIS規格の作業区分(種類)」「安全靴の付加的機能の種類」を説明し、「作業靴」や「プロテクティブスニーカー」との違いをお伝えします。
JIS規格の安全靴について
一般的に、爪先に鉄板が装着されている靴が安全靴であると思われていますが、実はJIS規格があり、それを満たしていなければなりません。
JIS規格で定めているのは、「安全靴(JIS T 8101)」と、「静電気帯電防止靴(JIS T 8103)」の2種です。また甲被材質は牛革かゴム、耐圧迫性能および耐衝撃性能を満たしている必要があります。
耐圧迫性能とは、爪先部分を平行な盤に挟み、ゆっくりと潰していく試験方法であり、潰したあとの先芯と靴の中底の隙間が規定値以上であることが定められています。
耐衝撃性能は、円錐形の20kg のおもりを規定の高さから先芯に落下させ、凹んだ状態での隙間を計測する方法です。圧迫試験同様、凹んだ部分と中底間に一定値以上のクリアランスがあることが必須条件です。
したがって、どれか1つでもJIS規格を満たしていない場合は安全靴とは呼べません。甲被が人工皮革やビニールレザーであれば、つま先部に鋼鉄芯が入っていても安全靴とは呼べず、JIS マークをつけることはできません。それらの靴は、「作業靴」や「プロテクティブスニーカー」という呼称で販売されています。
ただし、規格外のスニーカータイプの靴の需要増加に伴い、日本プロテクティブスニーカ協会はJIS規格と同等の業界標準(JSAA規格)を設定し、規格に合う製品には推奨マークを表示しています。
JIS規格の甲被について
甲被とは、安全靴の表面を覆う部分のことで、JIS規格において、甲被の材質は牛革かゴムであることが定められています。
通常、よく使用される安全靴は革製です。革は「摩擦に強い」「切れにくい」などの性質があるので、まさに足を守る安全靴に適した材質であると言えます。
革の性能も細かく定められており、引っ張り強さ15kgf/mm以上、伸び35%以上、厚さ1.7mm以上などと規定されています。
またゴム製安全靴には、耐油性のあるものとないものとがあります。ゴム製安全靴の定められた性能は、引っ張り強さ140kgf/平方cm以上、伸び300%以上などです。またゴム製は漏れ防止性の試験をクリアしなければなりません。
JIS規格の作業区分(種類)について
安全靴は作業区分によって以下のとおり3種類に分けられています。
- 1.重作業用(H)
先芯の耐衝撃性能100J・耐圧迫性能15kN、表底のはく離抵抗300N以上あるもの。 - 2.普通作業用(s)
先芯の耐衝撃性能70J・耐圧迫性能10kN、表底のはく離抵抗300N以上あるもの。 - 3.軽作業用(L)
先芯の耐衝撃性能30J・耐圧迫性能4.5kN、表底のはく離抵抗250N以上あるもの。
(略号の意味は、H=High、S=Standard、L=Low)
当然ながら、建設や鉱業の現場においては重作業用が適していますし、倉庫での軽作業等には軽作業用が適しています。ただし、近年の労働安全衛生環境や法令の改正などにより、今では重作業用でなければならないという場面は少なくなっていると言っていいでしょう。
安全靴の付加的機能の種類について
安全靴の付加的機能もJISにおいて定めれており、それは次のとおりです。
- 1.耐踏抜き性能(P)
くぎの貫通時の力1,100N以上あるもの。 - 2.かかと部の衝撃エネルギー吸収性(E)
衝撃エネルギー吸収性20J以上あるもの。 - 3.耐滑性(F)
靴底の動摩擦計数0.20以上あるもの。 - 4.足甲プロテクタの耐衝撃性(M)
足甲部への衝撃を緩和する性能を有するもの。
付加的性能についても、安全靴の作業区分と同様、箱に記載されています。
例 【安全靴 革製SP】: 耐踏抜き性能もある、革製の普通作業用安全靴
これら付加機能は、過去の労働災害を分析した結果、より安全な靴を開発する過程で生み出されてきたものと言えます。今後も安全靴は進化を続けることでしょう。